「タピオ・ヴィルカラ展」
先日、楽しみにしていた「タピオ・ヴィルカラ展」に行ってきました。
フィンランドの自然や暮らしの美しさを、デザインという形で表現し続けた、タピオ・ヴィルカラ。
ガラスや木工、陶器、紙など、さまざまな素材で作品を生み出し、イッタラをはじめとするブランドとも深く関わってきた、フィンランドを代表するデザイナーです。
彼の世界観を間近で感じられる、貴重な展覧会でした。

展示室に入ってまず目に飛び込んできたのは、ヴィルカラのアトリエで使われていたという木の扉。
時間を重ねた木の質感や重みがそのまま展示の入口になっていて、思わず立ち止まってしまいました。
そこに立っているだけで、まるで彼の工房に招かれたような、そんな不思議な気持ちになります。

会場には、代表的なガラス作品はもちろん、スケッチやグラフィック、パッケージデザインまで幅広く展示されていて、ひとつひとつをじっくり眺めながら楽しみました。

ガラスの作品は、近づいて角度を変えて眺めると、光の入り方で全く表情が変わります。
自然の色を抽出するかのような色彩感覚には、本当にため息が出ます。

展示の中で特に印象的だったのは、積層合板の作品。表面には、何層にも重ねた木の模様がうっすらと現れていて、それがまるで木の年輪のようにも見えました。

タピオ・ヴィルカラは、「作り手はすべての工程をしっかり理解し、素材のすべてを知ることが大切だ」と考えていたそうです。
図面を引くだけのデザイナーではなく、自ら手を動かし、素材と直接向き合う。
木に触れ、曲げ、削り、重ねていく中で、素材がどう反応するのか、どんな形を求めているのか。作る過程を大切にしていたということが伝わる作品でした。
展示を通して改めて感じたのは、美しいものは、ただ飾るためだけじゃなく、日々の暮らしの中で少しずつ育っていくものなんだなということ。
私たちのショップでも、長く使うことで愛着が深まる家具や器を大切にしていますが、その考え方は、ヴィルカラのものづくりともどこか重なる気がしました。
こういった商品をこれからも丁寧にお客様へ届けていきたいと、背筋がすっと伸びるような、そんな展示でした。

